
第9回「ほっとけないSHOW」レポート!〜よんなな会の発起人 脇 雅昭さんに学ぶ周りの巻き込み方〜
2021年4月14日(水)、オンラインにて第9回「ほっとけないSHOW」が開催されました。オフラインでは延期となっていた本イベントですが、約1年ぶりの復活です!今回は、全国の公務員をつなぐ「よんなな会」の発起人である脇 雅昭(わき まさあき)さんをゲストにお招きし、お話を伺いました。YouTubeとFacebookでの配信の他、事前申し込みのあった20名の参加者を交えて繰り広げられた、熱いクロストークの模様をお楽しみください!
ほっとけないSHOW
ほっとけないどうとは、北海道で挑戦したい人と応援したい人をつなぐことで、北海道を元気にする活動です。北海道を盛り上げたい!という熱い想いをもった挑戦者を、乾杯で応援する「ほっとけないAWARD」を定期的に開催しています。また今回開催した「ほっとけないSHOW」は、46都府県から各地域を盛り上げる活動を展開している方をゲストに迎えるトークイベントです。全国のほっとけない人と北海道がつながる場となっており、今回は初のオンラインでの開催となりました。

日本で誰よりも多く飲み会に参加する公務員?!
脇 雅昭さん(以下、脇):はじめまして!脇 雅昭です。僕は生まれも育ちも宮崎県で、2008年に総務省に入ってから14年間、ずっと公務員として働いています。熊本県に赴任した後は、学生の採用担当として働き、平成25年からは神奈川県庁にいて。国家公務員でありながら地方公務員としても働き、さまざまな視点で物事を見て仕事をしています。
プライベートでは全国の公務員をつなぐ「よんなな会」を主催したり、地元の大学生と働く大人をつなぐイベントを企画したり、ほっとけないどうが目指していることに近い活動を続けてきました。また僕は、Forbesに取り上げられるほどの飲み会マスターで、たぶん日本で誰よりも飲み会に参加している公務員です。コロナ前は年400回飲み会に参加していました。今はリアルで会うことは難しいけれど、オンラインでつながりを作る活動を続けています。

行政だけでは課題が解決できない時代
脇:現代は、公が抱えている課題を行政だけでは解決できない時代だと感じています。近年では、インターネットなどのデジタルの力を使い、人と人とが簡単につながることができますよね。これが、今の時代のいいところだと思うんです。その環境を存分に活かして、「課題を一緒に解決していける仲間を作りたい」という思いから毎日たくさんの人と会っていました。

行政の持つルールをつくる力
脇:4月からは神奈川県理事の未来戦略担当として活動しています。具体的にどういう仕事か説明することが難しいのですが、行政が持つ信用力を活かして世の中を良くする仕掛けを実験する仕事だと思っています。
行政は他にも、税金をいただく仕組みや、ルールをつくる力を持ちます。みんなが同じ方向を向くことができるルールは、今のコロナの世の中でもとても大切なものです。ただし、ルールがあるからといって義務的に行うのと、主体性を持って本人の意思で起こす行動には大きな差がある。「やらなくちゃ」ではなく「やりたくなる」仕掛けをつくるのが重要で、ルールをつくることだけに頼らない感覚を行政が持つのは、すごく意味があることだと感じています。

「やりたくなる」仕掛けづくり
脇:具体的なところで言うと、例えば「ゆるスポーツ」の普及。この写真は、施設のおばあちゃんが風船を使った的当てゲームをしている様子です。風船の中にはヘリウムガスが入っていて、手を離すと天井に投影されている的に向かってゆっくりと飛んでいきます。最初は興味がなさそうにしていたおばあちゃんですが、いつしか夢中になって遊び始めて盛り上がりました。一見ゲームのように見えますが、実はおばあちゃんたちが楽しんでリハビリができる仕組みになっているんです。

おばあちゃんたちが元気になる仕掛け
脇:「デジタルの力でもっとコミュニケーションを取れるようにしたい」という想いから、神奈川県庁を挙げて仕掛けづくりを行う会社を応援する場合もあります。
たとえば、インターネットで遠く離れた人と人をつなぐオンライン通話サービスを展開している「HELTE」さん。このサービスはデイサービスに通うおばあちゃんたちのコミュニケーションツールとして重用されています。おばあちゃんが会話をしている先は、タイの日本語学校の学生たち。日本語を学びたいタイの学生たちにとっては、おばあちゃんとの会話が日本語の勉強になり、おばあちゃんも頼られることで元気が出て、デイサービスにすすんで行くようになるんです。
デジタルの力やコミュニケーションの力を上手に使えば、こんな風に多くの人の笑顔が生まれるんじゃないかと信じています。世の中には社会のためになる面白い仕掛けを真剣に考えている人がいる。ただ施設に紹介するだけでは、コミュニケーションが足りず実現が難しいこともあるけれど、僕らが間に入ることで、価値ある仕掛けを広く普及させる取り組みをしています。

やらない平等よりやる平等
脇:最近では大手通信会社さんと組んで、彼らの行っているスマホ教室を県が全力で応援しています。スマホが使えない高齢者の方は、コロナ禍で得られる情報が制限されて、コミュニケーションの機会も少なくなっている問題がある。その状況を受けて、一緒に高齢者向けのスマホ教室を企画したんです。
こういった取り組みを行うと、なんで大手通信会社としか組まないのか、という話によくなります。行政が取り組む事業が誰にとっても平等なものになっているかどうかは、多くの人がチェックしていますし、このスマホ教室も走り出しの時にいろんなことを言われました。だからといって「辞めます」と言った瞬間、誰も幸せにならないですよね。僕が掲げているのはやらない平等よりやる平等。できることはやり尽くすくらいの勢いで全部やりきれば、平等だという考えです。
この問題に関しては行政が税金を使っていないことも大きなポイントです。もちろん、民間企業は何か利益が出る事業でないと動けないのもわかっているから、それが何になるのかを考えながら、お互いのメリットを探り合う作業もしています。大手旅行会社さんと日本で初めて連携協定を作ったり、それが全国に広がっていたり、全国で良い影響が生まれています。

課題=財産となる
脇:僕は、社会的課題ってすごく財産だと思うんです。行政だけで解決できない課題は、いつまで経っても課題のまま。けれど誰かに相談した瞬間、相手にとってビジネスになるかもしれないですよね。社会的課題は、そういったポジティブな可能性に満ちています。「助けてもらうことは、助けることと同じくらい価値がある」僕の好きな言葉です。誰かに迷惑を掛けてしまうんじゃないかと案じて、助けを呼ばない人も多いけれど、その叫びが誰かのやりがいに変わることだってある。財産ともいえるような課題をどれだけ集められるかが、これからの行政の鍵だと思っています。

無限の可能性を持つ公務員
脇:全国には地方公務員だけで273万人、国家公務員を合わせると338万人います。全員の志や能力が上がれば世の中がもっと良くなるんじゃないかなと思っていて、僕は公務員が無限の可能性を秘めていると信じています。一方で、一度組織に入ると手の届く人間関係の中だけで暮らして、その組織の当たり前に思考が支配されてしまうことってありますよね。自分の知っている世界が全てじゃないと知るためにも、たくさんの人と出会える場所を作ったら良いと思い、全国の公務員と関わることができる「よんなな会」をつくりました。
特に大事にしていたのは飲みの場です。ただの飲み会で終わらせないような仕組みをいつも試していました。ある時は、「皆さんの地元のものでみんなに食べて欲しいもの、飲んで欲しいものを一人一品ずつ持ってきてください」と言ってみました。そうすると、僕のところにたくさん苦情が来るんですよね。「何人来るかもわからないのに困ります」みたいな(笑)。でも、当日その場に来る前に、イベントのことを考えてくれる人たちがたくさんいることがわかって、苦情なのにすごく嬉しかったんです。当日は頼んでもいないのに持ってきたグルメを紹介し始めたり、1品でいいと言っているのに焼酎1ダース持ってくる人とかもいたり。今考えてみると、仕事でもプライベートでもどうやったら人がワクワクするのか、という仕組みを作り続けているのだと思います。

日常に寄り添うオンライン市役所
脇:非日常のイベントだけでなく、もっと毎日の暮らしに寄り添ったものが欲しいと思い、「オンライン市役所」というものも作りました。全国から2,700人以上の公務員が入っていて、いろんな悩みや課題を共有できるプラットフォームになっています。僕が熊本県に赴任したときの話で言うと、県で10人くらいで取り組んでいる仕事を、小さい町だと1人で任されていたりするんです。人もいないから相談する相手がいない、という状況があるのも経験で知っていた。けれど、いざ周りを見渡すと1,781の自治体があって、それぞれ同じような仕事をしていることに気づきました。業務内容に直結するようなノウハウを仲間に共有したり、音楽好きや、写真好きのサークルを作ったり。気軽に訪れて、なんでも相談できる日常の場として機能しています。

全ては人との出会いから
脇:広くやりすぎじゃないかと、お聞きになっている皆さんは感じているかもしれません(笑)。 どうしてそんなに頑張れるの?とよく聞かれますが、ワクワクするからとしか言えないんですよね。何か思いついた時、まだ動き始めてもいないのに課題が思い浮かんできて、自分の行動を邪魔してくるけれど、そういうのは相手にしません。動いてみて出会った課題こそが本当の課題で、それが見つかるまではとにかく行動を起こしてみることが大切、という考えです。だから、不安より大きなワクワクを原動力に挑戦することができる。これが僕がいろいろなことにチャレンジできる理由かもしれません。
今日言ったことは、全て人との出会いから感じていることです。本当にたくさんの人たちが一緒にやろうと言ってくれて、そのおかげで今の僕ができていると感じます。このイベントも、出会いの一つですよね。せっかくみなさんと会えたのなら、一緒にワクワクしながら北海道、そして日本を良くしてきたい。今日がそんな時間になったらいいな、と思うんです。
ほっとけないどう事務局 五十嵐:ありがとうございます!
司会進行 中村:チャット欄も盛り上がっています。「オンライン市役所興味あります!」「入りました、これからよろしくお願いします!」なんて方もいらっしゃいますね!
脇:嬉しいです。あいつおしゃべりだなって思われていないかな。大丈夫ですかね。
ほっとけないどう事務局 成田:みんな脇さんのお話を聞きたくて集まってますから、大丈夫ですよ(笑)。

ここでYouTube・Facebookでの配信終了のお時間に。オンライン交流会に移る前に、今回のクロストークで最後に脇さんに聞いてみたいトークテーマについて投票を行いました!

コトの起こし方、周囲の巻き込み方
五十嵐:2つ人気の質問があるので、どちらも伺いたいです!これまでたくさんの新しい仕掛けづくりに取り組まれてきた、脇さんのコトの起こし方、周囲の巻き込み方を教えてください。
脇:実は、何かを始めるときにそれでどんなことが起こるかまで考えていないんです。想像できる未来を作っても面白くないし、想像できないものが生まれて、こんな可能性があったんだと広がることが、すごく好きです。お話した例も、全部やってみたら結果こうなった、というものがほとんどだと思います。未来を見据えてコトを起こしているというよりは、よくわからない未来を面白くする仕組みを「とにかくやってみよう」って気持ちで考えているのに近いです。
五十嵐:公務員の立場でそれを実行できるのがすごいですよね。「きっと何かが起こるだろうから」ってスタートの切り方ができるのは技なのか、脇さんの人格なのか......。
脇:行政にもたくさんの職員がいて、自分の考えと意見が一致するとは限りませんよね。それはもう、ある意味当然のことです。たとえば、オフィスでは、上長との会話をフロアに居る決定権を持つ立場の人にも聞こえるよう大きな声でプレゼンして、選択肢を渡しておいていて。そこは、いろいろ考えてやっています。巻き込むって意味だと同じことを1万回同じテンションで言い続けるのが大事なのかもしれません。今日の自己紹介も、もう数え切れないくらい同じ説明をしてきたけれど、みなさんにとっては初めまして。想いをずっと全力で投げ続けることが、僕のコトの起こし方、周囲の巻き込み方なんじゃないかな、と思います。

全国を知る脇さんからみた北海道
五十嵐:では次に、全国を知る脇さんからみた北海道とは。ちょっと難しい質問かもしれませんが、いかがでしょう?
脇:公務員と一緒だなって思いますね。地方公務員だけで全国に約273万人います。先ほど「公務員としてそれを実行するのは大変ですよね」と五十嵐さんが言ってくださいましたが、人口の3%を一括りにしていることにお気づきでしょうか。
北海道って、土地の面積でいうと九州の2倍くらいありますよね。それを僕らは「北海道」という言葉でくくり、「北海道ってこうなんですよね」と言ってしまっている。市町村だけで179あって、街の中でもきっと違う。北海道をもっと分解すれば、これまで気付いてなかった魅力がいっぱいあると思うし、そういう意味で可能性の塊なんじゃないかな、と思います!

場にいる人と繋がる
五十嵐:ほっとけないどうってある意味民間で勝手に「北海道を盛り上げよう」とやっているものだけど、行政と一緒だったらもっとできることがあるな、とも感じます。いろんなところと連携しながらもっと盛り上げられたらいいですよね!
脇:ありがとうございます。おっしゃるとおりで、そのために僕も今日ここにいる全員と話をしたい!けれど、関われる度合いには限界があります。登壇者とつながろうとする動きは良くあるけれど、継続が難しい。それよりはこの場にいる人、集まっている人とどうやってつながりを作っていくかを考えるのがとても大切だと思います。今日ここに来ない理由はいくらでもありましたよね。みんな、大きな選択肢を経てここにいる。同じ気持ちを持った人たちとつながれたら何か素敵なことを起こせるんじゃないかな。そこにぼくもちょっとだけ混ぜてもらえたら、と思います(笑)。みんなで北海道、全国を盛り上げていきたい。そんな仲間になれたら嬉しいです!

掘り下げた話もザクザク
お話のあとは、事務局メンバーやイベント参加者も交え、オンライン交流会を行いました。脇さんの登壇を聞きつけて集った参加者の中には、まさに今公務員として働きながら、様々な課題にぶつかり悩んでいる人の姿が。脇さんに向けて集まる質問も、行政の中で働くならではの具体的な相談が多く、参加者同士で頷きながら共感し合う場面も見られました。思い思いの場所でお酒やドリンクを楽しみながら、ちょっぴり延長するほど最後までにぎやかだった本イベント。ほっとけないSHOWとしては初のオンライン開催でしたが、千歳、苫小牧、北広島などたくさんの地域からご参加いただき、「北海道」が広くつながることの意義を強く感じた1日になりました。最後はほっとけないどうらしく、乾杯で締めくくりました。次の開催もお楽しみに。

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