第10回「ほっとけないSHOW」レポート!~未来の山口の運動会とオンライン運動会~

2021年7月27日、オンラインにて第10回「ほっとけないSHOW」が開催されました。ゲストは、山口県で最先端の運動会を開催されている「未来の山口の運動会」運営メンバーの皆さんです。体を動かしてオンライン運動会を体験するワークショップの他、当日のトークセッションの様子をレポートします!

ほっとけない!× 北海道

ほっとけないどうは、北海道の「挑戦したい人」とその活動を「応援したい人」をつなぐ仕掛けを設けることで北海道を元気にする取り組みです。ほっとけないどうには北海道が好きな人や北海道を応援したい!という熱い思いを持った仲間(=DO!民)が集まり、1年を通してさまざまなイベントが開催されています!

また「ほっとけないSHOW」は、46都府県から各地域を盛り上げる活動を展開している方をゲストに迎えるトークイベントです。全国各地で挑戦している人をゲストに迎えることで刺激を受けたり、新たな学びを得たりしながら北海道の挑戦者を増やし、北海道を熱く盛り上げよう!という想いがあります。ほっとけないSHOWのイベントは、今回で第10回目の開催となりました!

「未来の山口の運動会」運営メンバーのご紹介

〇西 翼さん
運動会協会理事、山口情報芸術センター [YCAM] キュレーター
2015年に「YCAMスポーツリサーチプロジェクト」の立ち上げに参画し、毎年「YCAMスポーツハッカソン」、「未来の山口の運動会」のディレクションと運営に携わる傍ら、日本各地の「未来の運動会」、「スポーツ共創」プロジェクトの企画運営に参画。2019年に、あいちトリエンナーレアシスタント・キュレーター、2020年には、札幌国際芸術祭(SIAF)メディアアート部門マネージャーなど、各地の国際芸術祭でも専門性を活かした企画業務に従事する。

〇今野 恵菜さん
山口情報芸術センター[YCAM] 教育普及化プログラム / エクスペリエンス デザイン担当
慶應義塾大学SFCにてHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)とデジタルなものづくりを学ぶ傍ら、友人とDIYグループ「乙女電芸部(おとめでんげいぶ)」を立ち上げ、ワークショップなどを多数開催する。2018年3月にサンフランシスコの科学館「Exploratorium」での研修を終えて、YCAMでの仕事を再開。

〇山根 賢三郎さん
株式会社超民家やまね
海外スポーツ文化を知る事を目的としてオーストラリア、アジア、ヨーロッパを中心にバックパッカーをしたのち山口にUターン。古民家に住みながら自給自足を目指しつつ、瓦そば移動販売、民泊、デザイン業務を中心とした「株式会社超民家やまね」を設立。YCAM主催の「未来の山口の運動会」に参加者として関わり、暮らしやコミュニティ作りの目線からスポーツ共創のあり方を考える。

自分たちで作って楽しむ「未来の運動会」

西 翼さん(以下、西):僕らがやっている「未来の山口の運動会」は、自分たちで作った種目を楽しむ運動会を、自分たちで作ろう!という発想をベースに、2015年から山口県で始まったプロジェクトです。これまでスポーツは既にあるルールの中でプレーするものでしたが、「未来の運動会」では、みんなのルールをみんなで作る「スポーツ共創」という考え方を大切にしています。運動会というと当日プレーすることだけに焦点が当たってしまいがちですが、「参加するだけではなくデベロップする(=作る)ことも同じくらい大切で楽しいことだ!」という考えの元、大人から子どもまで大勢の人を巻き込んで、みんなで運動会というイベントを作っています。

山口情報芸術センターとは?

今野 恵菜さん(以下、今野):会場である「山口情報芸術センター(Yamaguchi Center for Arts and Media)通称:YCAM」は、山口県山口市に位置する複合文化施設です。大きくは美術館にカテゴライズされるものですが、作品の展示や講演だけではなく「作品を作る」という機能、役割も大切にしています。作った作品をお客様に繋げるフォローアップをするスタッフが常駐しているのは、全国的にみても珍しいのではないかと思います。

YCAMは「未来の山口の運動会」の会場となる前から、人間の「身体」を大事にする取り組みを続けていました。情報芸術センターという名前の通り最先端のテクノロジーを使った作品も多く、モーションキャプチャを活用して即興ダンスと思考の結びつきを徹底調査したり、人工知能とダンスを組み合わせてみたりなど。他にも、YCAMの施設内には、子どもたちに新しい遊具やルールを作る裁量を渡して可能な限り自由に使い込んでもらう「コロガル公園シリーズ」という公園を制作しています。他にも、音と光の出るオモチャで自由に遊びを考えてもらう「Think Things」というプロジェクトも行っていて、随分と前から身体のことや、遊びとルールのことを考えてきたような気がします。こうした活動を続ける中で、みんなの興味が集まった結果「未来の運動会プロジェクト」が誕生しました。

テクノロジーも競技の道具に

今野:今では全国各地で開催している「未来の運動会」ですが、YCAMでは最新のテクノロジーを多く活用しているのが特徴です。普段学校の運動会で使われているボールやカゴなどの一般的な道具以外にも、最先端のメディアやテクノロジーも同じように道具として取り入れ、さまざまな種目を一から考えて実践してきました。単なる力比べではないゲームを作ることで、性別や年齢、運動の得意不得意も関係ない、一人一人の特徴が多様な価値になる全く新しい種目が集まっているのが「未来の山口の運動会」の特徴です。

たとえば、一般的な綱引きを振動センサーと組み合わせて、引っ張る力と地団太を踏んだ数の合算で勝敗が決まるようなルールにしてみたり、スクリーンに投影された漢字を、寝転びながら大きな人文字で表現するまでの速さを競うという種目もありました。

オンライン上で入場行進?!

今野:「未来の山口の運動会」は毎年5月に開催していたのですが、去年はコロナウイルスの影響でイベントが全く行えない状況に。そこで2020年はZoomを使ったオンライン運動会を実施することにしました。オンラインホワイトボードサービスを使ってYCAMの会場を再現したり、2Dの世界の中で入場行進をしてみたり。インターネット上で開催するとはいえ、パソコンの中だけで解決するものでは無く、手や足など少しでも身体を動かせる種目が特に盛り上がったのは面白かったですね。ちなみに今年は、オンラインとオフラインの半々で競技を行う「ハイブリット運動会」として開催することができました。

体験してみよう!【ワークショップ】

西:オンラインで行う運動会ってどういうこと?と思われた方もいらっしゃると思いますので、実際の運動会でも実施した「オンライン借り物競走」を皆さんでやってみましょう。ルールは簡単で、色やモノなど出されたお題を各ご家庭の中で探してください。いきますよ!

西さんからの提案により、「サッポロビールの黄色」という色のお題で競技がスタートし、他にも「赤色」「綿棒」「逆さにしても使えるもの(⁈)」というユニークなものまで。ルールを聞いてからすぐに開始した競技でしたが、ゲストも参加者も全員が交じり合い大盛り上がりでした!

人から人へ。日本中で広がる「未来の運動会」

西:嬉しいことに、近年では「未来の山口の運動会」の元参加者を介して「未来の運動会」が日本中に広がっています。第1回目の参加者の方が、自分の住んでいる地域でも開催したい!と申し出てくれた際には、「未来の大阪の運動会」を開催するお手伝いをしました。誰もが知っている「だるまさんが転んだ」を運動会種目にアレンジした「なにわさんが転んだ」は、あのグリコのポーズで立ち止まることが競技のルール。2018年に渋谷で開催したときには「スクランブル交差点」にインスパイアされた玉入れが生まれたり、京都での開催では「修学旅行」というキーワードを元に種目ができたり、地域性を反映させた種目がいくつも誕生しました。

「場を作る人」のためのコミュニティ作り

西:こうした経緯もあって、最近ではただ運動会を作って楽しむだけではなく、それを持ち帰って「スポーツをつくる場を作る人」に向けた「スポーツ共創人材育成ワークショップ」というものを行っています。スポーツ以外でも、場づくりに挑戦したいと思っている人に向けて「未来の運動会」で培ったノウハウを生かして研修をしたり、情報交換ができるコミュニティを作ったりなど、実際に場づくりの活動をしている人と参加したい人をマッチングできるとよりいいですよね。世界中に「運動会を作る人」が増えてくれたら嬉しいので、これからも取り組んでいきたいと思っています。

観光としての側面も

山根賢三郎さん(以下、山根):僕は元々「未来の山口の運動会」の参加者だったのですが「スポーツ共創」というものに触れる中で、地方の「観光」と掛け合わせられないかと考えるようになりました。そんなときにちょうど僕が住んでいる山口県の徳地(とくぢ)町からの依頼で、地域の中で楽しめる滞在型観光事業のコンテンツを作ることになったんです。

徳地には「徳地奇兵隊」という歩兵部隊がいた歴史があり、それをモチーフにした「倒幕サバゲ―」というサバイバルゲームを考案しました。競技を始める前に「徳地奇兵隊」に詳しい地元の方にしっかり解説をしていただき、ゲーム中には普段観光では足を踏み入れないような場所を訪れました。歴史を知り、その地域を存分に歩き回り、そして何より楽しむことができるのが、このサバゲーの最大の魅力です。

西:僕らが無自覚に「未来の運動会」と名付けたものから、山口でスポーツを作る活動がどんどん広がっています。必ずしも「運動会」である必要はないと思っていて、観光で活かされている山根さんの例には僕らも勇気づけられています!

ルールを作る経験から気づくこと

山根:競技を作るとき、実際に身体を動かしてテストをするのですが、面白そう!と思うルールを後から肉付けしていくと、最終的にすごく複雑なものができあがることがあります。でもいざ運動会が終わって思い返してみると、シンプルなものが一番面白く感じたりします。そういう気づきも、ルール作りの一環として楽しめるのがいいですよね。

西:作っている皆さんの様子を見ていて思うのですが、「未来の運動会」って良い意味で勝ち負けをすごく軽視しているんです(笑)。勝敗は結局「勝ち」という要素をどのように入れるかで、簡単にデザインできてしまうことがわかったりして。それを感じられるだけでもルールを作るという経験には意味があると思っています。

みんなで作る、小さな社会の縮図

西:運動会を長く行っていると多くの人から感想をいただく機会があるのですが、特に印象に残っているのは、「『未来の運動会』が民主主義の練習のように思えた」という参加者の方からのコメントです。確かに僕らも運動会のことを「小さな社会」と呼んでいましたが、違うバックグラウンドを持った人たちが集まって、そこで決まったルールに従って行動する。単純に、「スポーツが楽しい!」「みんなでわいわいするのが楽しい!」というモチベーションだけでも十分ですが、見方を変えると「未来の運動会」にはいろいろな要素が詰まっていて、スポーツ以外の場所で活きる学びや発見につながることがあります。楽しい+αで学べるのがスポーツ共創です。自分や組織の課題にぶつかったときに「こんなイベントをやっている人がいたな」と思い出してもらえたら嬉しいです。

今野:「未来の運動会」の参加者の方で、「もともと運動会が好きじゃなかったんだよね」と言っていた方も少なくありませんでした。経験した運動会が楽しくなかったからこそ、自分たちで本当に楽しめる運動会を作ってみたい!という動機も素敵ですよね。楽しいをとことん追求できて、みんなで作るからこそ、みんなのものにできるのが「未来の運動会」です。誰かと何かを作るときはもちろん、大人になってからも生きる経験を培うことができると信じています。

山根:「スポーツ共創」というと難しいものに感じるかもしれませんが、身近なものを丸めてオモチャを作ったり、自分たちで新しい遊びを考えたり、子どもの頃から誰もがやってきたすごくシンプルな行為のはずです。大人になっても子ども心を忘れずにスポーツをすることを楽しんでもらえれば嬉しく思います。

ほっとけないSHOW初の運動会種目のワークショップや、その後の質疑応答の時間も「遊びの力」を心から信じる3名の熱い想いに触れる素敵な時間となりました。「どうなっちゃうの?を、やっちゃうの!」を合言葉に、全国の’’ほっとけない’’人たちが集まる、DO!民コミュニティへのご参加も、お待ちしています。次回の開催もお楽しみに。

まずはDO!民登録
「DO!民」が集う、ほっとけないどうのコミュニティへの参加はこちら!
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飲んで応援!
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(ライター いけだ みほ)