Project 42

冬場でも新鮮野菜を収穫したい!デスクトップ菜園システムR&D

登壇日

青木 広宙

2013年より北海道に移住し、日々、北海道の奥深さを感じている。医療・福祉・農業など様々な分野への画像技術応用が主戦場で、たまにメディアアート制作も行う。趣味はカレー作りと芋焼きで味はプロ級(自称)。

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プロジェクト概要

公立千歳科学技術大学で准教授をしております青木広宙と申します。
もともとは新潟県の出身で、全国の大学を転々としながら様々な研究プロジェクトに参画し、2013年に北海道に移住しました。以来、北海道の素晴らしさと奥深さをかみしめながら、毎日を過ごしています。

専門は画像工学です。画像工学は、デジタルカメラで撮影された画像をコンピュータで解析することで、さまざまなものを計測したり、認識したりするような技術のことです。これまで私は、画像技術を医療、福祉、健康増進などに応用する研究に主に取り組んできました。

最近では植物の生長の様子を撮影し、自動的に茎の長さや葉の面積を計算してくれるようなシステムの研究開発に取り組んでいます。今回、支援をお願いするプロジェクトは、植物の計測システムに関する研究に取り組み始めたきっかけとなっています。

プロジェクト背景

「北海道は野菜です。」
何を言っているのかよくわからないと思いますので、順を追って説明しますね。道外の人たちにとっての北海道の食のイメージは「なにはともあれ魚介類がうまい!」ということだと思います。しかし、私が北海道に住んで感じたのは「むしろ野菜がうまい!めちゃくちゃうまい!」ということです。夏から秋にかけての野菜の収穫期は、まさに天国と言ってよいでしょう。

しかしながら、冬は地獄です。12月から4月上旬あたりまで、スーパーの野菜売り場には、本州から輸入された鮮度の低い野菜が並び、辛い日々が続きます。

極寒の北海道の冬場でも、おいしくて新鮮な野菜を食べることができないか?そんな個人的な欲望をきっかけとして、私は研究室内で野菜を作り始めました。北海道の建物の特徴は気密性の高さであり、これが暖房効率を高めることに役立っています。冬場、屋外で野菜を作れないのであれば、室内で作ればいいじゃないっ!

実は10年ほど前から全国で、室内で野菜を生産する植物工場が展開されています。太陽光を用いずに人工光を利用する植物工場は、「完全人工光型屋内植物工場」と呼ばれ、天候の変動に影響を受けにくいというメリットがあります。しかしながら、人工光として利用される蛍光灯やLEDは、太陽光と光の波長が異なることから、露地栽培と同じような植物の生長が見込めないというデメリットがあります。

当研究室では、太陽光に近い波長を持つ光源であるLEP(Light Emitting Plasma:発光プラズマ)に着目し、植物の生育への有効性・有用性について検証してきました。その結果、蛍光灯やLEDに比べて、早いスピードで植物が生長することを明らかにしています。

また、植物工場では、栽培が簡単な葉菜類(いわゆる葉物野菜)ばかりが栽培されているのですが、LEPを使うことで、トマトなどの果菜類やビーツなどの根菜類も容易に栽培できることがわかってきました。

プロジェクトで何を実現したいのか

新しい技術導入により、屋内でも、露地と同じようにさまざまな野菜が栽培できることがわかってきました。現在は温度コントロールを含めた形で、デスクトップ(あるいはテーブルトップ)で展開できる小型の菜園システムとしての完成を目指しています。

小型のシステムとしたのには、理由があります。小型化することにより、家庭はもとより、学校、介護施設、商業施設など、さまざまな場所に設置可能なシステムとなりうるからです。人々が集う場所で、みんなが一緒に野菜を育てるようなことができたら素敵だと思いませんか?

また、前述の通りLEPは、太陽光に近い波長を持つことから、照明としても非常に優れています。冬場の北海道ではどうしても陽の光にあたる機会が減ってしまい、鬱々としてしまいがちです。生活の中で植物の緑とともに、明るい太陽のような照明が導入されたら、晴れやかな気分で毎日を過ごすことができるのではないでしょうか?

資金の使い道

ご支援いただいた金額の一部は、プロトタイプシステムの開発費として使わせていただきます。加えて、道内の施設でフィールドテストを実施したいと考えております。そのための設置費用、運用費用として使用させていただきます。フィールドテストの様子は、皆様に見ていただけるよう、オンサイトおよびオンラインで公開する予定です。

最後に(支援のお願い)

「食」は、北海道が誇るべき大きな産業です。
我々道民にとって身近な存在である「食」を、さらに身近に感じながら生活するような場を構築したいという想いから、本プロジェクトを立ち上げました。ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。